タイにおける知的財産法制度

タイの知的財産権に関する法律は、下記の関連法令等があります。

  • 特許法(1999 年第3 次改正):Patent Act B.E. 2522 (1979)、B.E 2535 (1992) and B.E. 2542 (1999)改正
  • 商標法(2000 年第2 次改正):Trademark Act B.E. 2534 (1991)、B.E. 2543 (2000)改正
  • 著作権法(1994 年制定):Copyright Act B.E. 2537
  • 地理的表示保護法(2003 年制定):the Geographical Indication Protection Act B.E. 2546
  • 植物品種保護法(1999 年制定):Plant Varieties Protection Law B.E. 2542
  • 集積回路配置保護法(2000年制定):Act on Protection of Layout-Designs of Integrated Circuits B.E. 2543
  • 営業秘密法 (2002 年制定):Trade Secrets Act B.E. 2545
  • 伝統医薬知識保護促進法 (1999年制定):the Protection and Promotion of Traditional Thai Medicine Wisdom Act B.E. 2542 (A.D. 1999)

タイにおいて知的財産権法の執行義務を有する政府機関は現在、

  • 商務省知的財産局(Department of Intellectual Property :DIP ,Ministry of Commerce: http://www.ipthailand.org/)、
  • 経済犯罪調査部 (the Economic Crime Investigation Division: ECID)、
  • DIPの知的財産権侵害抑止調整センター(Centre for Coordination of Deterrence Against Intellectual Property Violation)
等があります。 さらに中央知的財産国際貿易裁判所(Central Intellectual Property and International Trade Court : IP & IT Court)は1997年に設立された知的財産と国際貿易について専属の管轄を有する特別裁判所です。この裁判所は、知的財産権及び国際通商裁判所の設置及び手続に関する法律(1996年)に基づいて設立されました。

知的財産権に関する国際条約のうち、タイが現在加盟しているのは、

  • TRIP協定、ベルヌ条約(1931年07月17日)、
  • WIPO加盟(1989年12 月25日)、
  • WTO加盟(1995年1月1日)、
  • パリ条約(2008年08月02日)、
  • 特許協力条約(PCT)(2009年09月24日に加盟書寄託、2009年12月24日に発効)
ですが、マドリッド・プロトコルやUPOVには現在加盟していません。しかし、加盟に前向きであり、その検討が進められて、マドリッド・プロトコルに2015年に加盟する予定です。

保護対象

特許 (発明:物の発明、方法の発明)
実体的要件:新規性、進歩性、産業上の利用可能性
権利保護期間:出願日から20 年間
小特許(発明:物の発明、方法の発明)
実体的要件:新規性、産業上の利用可能性
権利保護期間:出願日から6 年間(2 年ずつ2 回更新可能)
※1.小特許の対象となる発明は産業上の利用可能性と新規性のみが要件であり(タイ法65条の2)、進歩性は必要とされない。よって、他国の出願において進歩性なしとして拒絶された発明であっても、産業上の利用可能性と新規性を備える場合は、タイで小特許を得ることが可能である。また、進歩性の要件が無いため、登録後に無効になりにくい。
2.物の発明だけでなく、方法の発明も保護対象として認められている。
3.上記1及び2より、タイの小特許制度は、他国で権利化が認められなかった発明を権利化できる可能性がある点で有用と考えられる。
意匠特許(意匠:手工芸意匠を含む新しい工業意匠)
実体的要件:新規性、工業・工芸上の利用可能性
権利保護期間:出願日から10 年間
商標法
商標、サービス商標、証明商標、団体商標 識別性、法で禁止されていない商標であること、登録商標に同一もしくは類似していないこと 必要 指定した商品/役務に係る商標の使用 個人名もしくは事務所名に善意で使用すること、またはその商品の記述に善意で使用すること等
登録日から10 年間。10年ごとに更新可能
著作権法
創作物(文学/演劇/美術/音楽/視聴覚/録音/映画/視聴覚放送など) 著作者によって創作されたもの。 自動的に保護されるが、知的財産局へ記録することが可能 複製、改変、公衆への伝達、著作権から生じる利益を他人に与えること 私的使用、利益を目的としない研究、教育目的等
創作日から起算して、創作者の死後50 年間まで法人著作の場合は、公表後50年間

出願から登録までの手続

1.特許出願
(1)出願時の必要書類:

   (ⅰ)願書:

発明者の氏名及びその住所、出願人の名称及びその住所、優先権主張に関する情報(優先権主張の有無、優先権主張国、優先権主張番号、優先権主張日等)、出願代理人に関する情報(出願代理人がある場合)、等をタイ語で記載する。

(ⅱ)明細書、要約、必要な図面:

原則、出願時にタイ語で準備する。ただし、優先権主張がある場合は、日本語等の外国語による明細書等の提出でもって、出願することができる。この場合、タイ語翻訳文を出願日から90日以内に提出しなければならない。

(ⅲ)委任状:

代理人による出願であって、出願人が外国人の場合は、公証手続きのある委任状(英語翻訳文付き)が1通必要(出願人が署名、公証認証要)となる。

出願人がタイ法人である場合、代理人を通さず自ら出願することが可能である。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅳ)譲渡証:

出願人が発明者でない場合に必要である(譲渡人と譲受人が署名)。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅴ)出願権証明書:

発明者と出願人が同一の場合、譲渡証の代わりに用意する。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅵ)優先権主張に関する申請書:

タイ語の一定書式に記入する必要がある。

(ⅶ)優先権証明書:

優先権主張日から16ヶ月以内で、かつ公報発行日までに提出する必要がある(タイ語の翻訳文は不要)。

(2)方式審査:

出願後、その出願が方式的要件に合致しているかどうか、また登録できない特許の事由に該当するか否かについて審査される。

上記審査後、担当官により、補正が必要な出願については補正命令がなされ、不登録事由に該当する場合は拒絶命令がなされる。

出願人は担当官の命令を受領した日から90日以内に補正し、書類を提出しなければならない。

出願人が担当官の命令に従わないときは、出願人はその出願を放棄したものとみなす。

(3)出願公開:

方式審査の結果、補正や拒絶をするに当たらないと判断された場合、出願公開が命じられ、出願人に出願公開手数料の支払い通知がなされる。

出願人はこの通知を受領した日から60日以内に公開手数料を納付する必要がある。

この通知に対して、公開手数料が納付されなかった場合、再通知がなされ、出願人は再通知を受領した日から60日が経過するまでに公開手数料を納付しない場合は、出願は放棄したものとみなされる。

(4)実体審査:

(ⅰ)実体審査
実体審査は審査請求があった出願について行う。

出願人は、出願公開後5年以内か、又は異議申し立て及び審判請求が提出されているときはその最終決定後1年以内の何れか遅くに満了する期限内に、審査請求をしなければならない。出願人が上記期間内に審査請求をしない場合、出願は放棄されたものとみなす。

審査請求があった場合、出願に対して、新規性、進歩性、産業上の利用可能性等について審査が行われる。

発明が新規性等の特許要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が発行される。出願人はこの通知の発行日から90日以内に、意見書・補正書を提出することができる。この提出期間は、90日の延長を請求可能で有り、更に30日の延長を請求することも可能である。

上記拒絶理由通知に対する応答をした場合であっても、拒絶理由が解消されていないと判断された場合は、拒絶査定がなされる。拒絶査定に対しては、当該査定の通知日から60日以内に不服審判の請求が可能である。

(ⅱ)外国機関の審査結果報告書の採用(特許法第27条):外国政府又は国際特許関係機関に依頼した審査結果をタイ国での審査結果(アメリカ、ヨーロッパ、日本特許庁等の審査結果報告書等)とし、審査の時間的効率化を図る
外国にすでに出願しており、その外国からの最終審査結果報告書を受領した場合、出願人は、その審査結果報告書を受領後90日以内にその審査結果報告書をタイ商務省に提出しなければならない。

出願人、又はその代理人、在外の出願人にあっては在タイの代理人の申請(審査請求~最終処分までの間)により、外国の審査結果に係る書類を提出した場合、請求により、タイ知的財産局において当該出願は他の出願に優先して審査してもらうことが可能である(早期審査)。上記請求をするにあたり、タイ特許法第27条に従い外国の審査結果及びそのタイ語訳を提出していることが必要である。

なお、我が国の特許公報は上記審査結果報告書に該当する。

(5)特許の付与:
実体審査の結果、新規性等の登録要件を満たしている場合、登録・特許付与が命じられる。

出願人はこの命令を受領した日から60日以内に特許付与に係る手数料を納付する必要がある。

特許付与に係る手数料が納付された後、発明が登録された出願人に特許が付与される。

この納付期間内に手数料が納付されない場合、出願は放棄したものとみなされる。

2.小特許出願
(1)出願時の必要書類:

   (ⅰ)願書:

発明者の氏名及びその住所、出願人の名称及びその住所、優先権主張に関する情報(優先権主張の有無、優先権主張国、優先権主張番号、優先権主張日等)、出願代理人に関する情報(出願代理人がある場合)、等をタイ語で記載する。

(ⅱ)明細書、要約、必要な図面:

原則、出願時にタイ語で準備する。ただし、優先権主張がある場合は、日本語等の外国語による明細書等の提出でもって、出願することができる。この場合、タイ語翻訳文を出願日から90日以内に提出しなければならない。

(ⅲ)委任状:

代理人による出願であって、出願人が外国人の場合は、公証手続きのある委任状(英語翻訳文付き)が1通必要(出願人が署名、公証認証要)となる。

出願人がタイ法人である場合、代理人を通さず自ら出願することが可能である。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅳ)譲渡証:

出願人が発明者でない場合に必要である(譲渡人と譲受人が署名)。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅴ)出願権証明書:

発明者と出願人が同一の場合、譲渡証の代わりに用意する。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅵ)優先権主張に関する申請書:

タイ語の一定書式に記入する必要がある。

(ⅶ)優先権証明書:

優先権主張日から16ヶ月以内で、かつ公報発行日までに提出する必要がある(タイ語の翻訳文は不要)。

(2)方式審査:

出願後、その出願が方式的要件に合致しているかどうか、また登録できない特許の事由に該当するか否かについて審査される。

上記審査後、担当官により、補正が必要な出願については補正命令がなされ、不登録事由に該当する場合は拒絶命令がなされる。

出願人は担当官の命令を受領した日から90日以内に補正し、書類を提出しなければならない。

出願人が担当官の命令に従わないときは、出願人はその出願を放棄したものとみなす。

(3)小特許の付与:
方式審査の結果、登録に値すると判断された場合、登録・小特許付与が命じられ、出願人に小特許の付与及び公告に関する手数料の支払い通知がなされる。

出願人はこの通知を受領した日から60日以内に小特許付与及び公告手数料を納付する必要がある。

上記期間内に上記手数料が納付された場合、小特許として登録され、特許証が発行され、小特許としての内容が公告される。

上記期間内に、出願人が上記手数料を支払わなかった場合、出願は放棄されたと判断される。

3.意匠特許出願
(1)出願時の必要書類:

   (ⅰ)願書:

創作者の氏名及びその住所、出願人の名称及びその住所、意匠に係る物品の名称、優先権主張に関する情報(優先権主張の有無、優先権主張国、優先権主張番号、優先権主張日等)、出願代理人に関する情報(出願代理人がある場合)、等をタイ語で記載する。

(ⅱ)意匠(製品)を表す図:

意匠(製品)を表す図は、図面でも写真でも良いが、その意匠の前面、後面、右側面、左側面、上面、底面、斜視図を示さなければならない。

さらに、登録保護を求める意匠(製品)の重要部分全てを明確に示すものでなければならない。

(ⅲ)意匠(製品)の説明書:
製品の説明書には、図面に記述できない内容、例えば、その製品の資材、使用目的、性質などをタイ語100文字以内で記入する。

(ⅳ)意匠請求の範囲(1つの明確、簡素なクレーム):
出願人が保護を求めている、その製品の外形の特徴や模様あるいは色彩の範囲について、一項だけ記入する。

2以上のクレームは認められない。

(ⅴ)委任状:

代理人による出願であって、出願人が外国人の場合は、公証手続きのある委任状(英語翻訳文付き)が1通必要(出願人が署名、公証認証要)となる。

出願人がタイ法人である場合、代理人を通さず自ら出願することが可能である。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅵ)譲渡証:

出願人が創作者でない場合に必要である(譲渡人と譲受人が署名)。

出願日から90日以内に提出することができ、この期間は延長することができる。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅶ)出願権証明書:

創作者と出願人が同一の場合、譲渡証の代わりに用意する。

タイ語で記載したものが必要となる。

(ⅷ)優先権主張に関する申請書:

タイ語の一定書式に記入する必要がある。

(ⅸ)優先権証明書:

優先権主張日から16ヶ月以内で、かつ公報発行日までに提出する必要がある(タイ語の翻訳文は不要)。

(2)方式審査:

出願後、その出願が方式的要件に合致しているかどうか、また登録できない意匠特許の事由に該当するか否かについて審査される。

上記審査後、担当官により、補正が必要な出願については補正命令がなされ、不登録事由に該当する場合は拒絶命令がなされる。

出願人は担当官の命令を受領した日から90日以内に補正し、書類を提出しなければならない。

出願人が担当官の命令に従わないときは、出願人はその出願を放棄したものとみなす。

(3)出願公開:

方式審査の結果、補正や拒絶をするに当たらないと判断された場合、出願公開が命じられ、出願人に出願公開費用の支払い通知がなされる。

費用を納付した場合、出願の公開が行われる。

この通知に対して、期間内に支払いをしなかった場合、この出願は放棄したものとみなされる。

この通知に対して、公開手数料が納付されなかった場合、再通知がなされ、出願人は再通知を受領した日から60日が経過するまでに公開手数料を納付しない場合は、出願は放棄したものとみなされる。

(4)実体審査:

(ⅰ)実体審査
実体審査は出願公開後90日以内に異議申し立てがなかったか、あるいは、最終的に異議申し立てが認められなかった場合に行われる。

実体審査は、その意匠出願に新規性があるか、また工業・工芸上の利用可能性について審査が行われる。

意匠が新規性等の登録要件を満たしていない場合、拒絶理由通知が発行される。

出願人はこの通知の発行日から90日以内に、意見書・補正書を提出することができる。

この提出期間は、90日の延長を請求可能で有り、更に30日の延長を請求することも可能である。

上記拒絶理由通知に対する応答をした場合であっても、拒絶理由が解消されていないと判断された場合は、拒絶査定がなされる。

拒絶査定に対しては、当該査定の通知日から60日以内に不服審判の請求が可能である。

(ⅱ)外国機関の審査結果報告書の採用(準第27条、65条):外国政府又は国際特許関係機関に依頼した審査結果をタイ国での審査結果(アメリカ、ヨーロッパ、日本特許庁等の審査結果報告書等)とし、審査の時間的効率化を図る
外国にすでに出願しており、その外国からの最終審査結果報告書を受領した場合、出願人は、その審査結果報告書を受領後90日以内にその審査結果報告書をタイ商務省に提出しなければならない。

(5)意匠特許の付与:
実体審査の結果、新規性等の登録要件を満たしている場合、登録・意匠特許付与が命じられる。

出願人はこの命令を受領した日から60日以内に意匠特許付与に係る手数料を納付する必要がある。

意匠特許付与に係る手数料が納付された後、意匠が登録された出願人に意匠特許が付与される。

この納付期間内に手数料が納付されない場合、出願は放棄したものとみなされる。

出典:ジェトロ